ロード選手にとってのシクロクロスという競技

シクロクロス=とても簡単にいうと、ロードっぽい自転車にちょっと太めのタイヤをつけてオフロードの周回コースで行う競技、コース状にはたまにある高さ40cmくらいの障害物を超えたりもするテクニックとパワーの両方が試される冬の競技、でしょうか。

Photo: Kei Tsuji

僕自身、U23時代にシクロクロスを走りはじめ、中断していた期間はあるものの、最近は毎年のようにシクロクロスを走っています。

さて、このシクロクロスという競技、みなさんは興味がありますか?それとももうすでに大会に参加していますか?ここではそのメリットデメリットを考えてみましょう。


まずはシクロクロスの競技特性から。

シクロクロスは、競技規則で定められた制限のあるタイヤ幅、ロードバイクに似た車体の形状のせいで、テクノロジーの入る余地が格段に少なく、ほぼ選手本人のスキルのみに依存しています。タイヤ表面のパターンも伝統的な形状のままだし、ジオメトリーももう確立してしまっているように感じます。言い方は悪いかもしれませんが、もう何年も機材がたいして進歩しないので選手の力量が純粋に測れるとも言えます。

同じようにオフロードを走る競技にマウンテンバイク(MTB)もありますが、こちらは大きな車輪にサスペンションがついていたり幅広リムに太いタイヤでオフロードをハイスピードで駆け抜けるテクノロジーが入っていて、機材は日進月歩。コースも年々大きく変わっていっていて、シクロクロスとはまた違った競技特性になっているので選手に求められるものも違ってきていると思います。

Photo: Kei Tsuji

ポジションや空気圧の細かい変化に対する感度、ハイスピードで追い込みながら行うバイクコントロールの繊細さは自転車競技の中でもシクロクロスが随一だと思っています。

競技時間は、例えば「エリート男子は約60分」というように時間で目安が決められていて、最終的はレースの周回数はレースがスタートした後に選手の走るタイムから逆算して決定されるので、早く走っても遅く走っても走らなければいけない時間は大きく変わりません。

選手にとってシクロクロスをするメリットとは?

この競技で稼げるか稼げないかは、国や環境に依存するのでここでは置いといて。。。

冬の寒い時期、ロードレースはオフシーズンなので開催されていないので、その時期にシクロクロスを走ることで選手のモチベーションを維持したりトレーニングのリズムを保ったりすることができます。いつもと違ったコンディションでレースを走れるので、選手が自主的に参加するのであればメンタル面でもリフレッシュにもなるでしょう。ずーっとロードの練習ばかりだし今週末はちょっとシクロクロス走っちゃお的な感じで。

そして、この競技の特性上、60分間周回コースでひたすら高強度のインターバルを繰り返すので、身体へしっかり負荷をかけることができます。普段の練習でこんなにもインターバルを本気で繰り返すことはなかなかできないと思います。そして運動強度が高いのに加えて、息が上がった状態で細くキャパの小さいタイヤ(MTBに比べると)とシンプルな自転車で悪路を走るので高いテクニックが要求されます。空気圧やポジションに対する感度もロードにはない繊細さがあります。

参考までに僕自身のレースのスタートからのデータの一部です。スタートしてすぐに心拍数は上がってそれを維持したまま高いパワーを出すインターバルを繰り返しています。

集団から千切れたら終わりのロードレースと違って常に前にも後ろにも選手がいるので、60分間集中して走ることができますし、ただ単に順位だけの評価ではなく走り切った時の達成感も大きい気がします。

荒地を走るので当然ながら転倒のリスクは伴いますし、実際多くの方が1レース走れば1回は転んだりします。ワールドカップでもトップ選手ですらミスしてバンバン転んでますね。しかし、高強度の割にはオフロードなので平均速度はそこまで上がらず、転んだとしても下は柔らかい土だったり芝生だったりするので、大きな怪我はしないことが多いです。なのでハイスピードで転んだら硬いアスファルトに叩きつけられるロードレースに比べると随分と安全だと思います。滑りやすいタイヤを制御しつつ、自転車を乗り降りしたり、万が一転ぶ時もゆっくりなので、バイクコントロールを養うには素晴らしい競技だと思っています。

Photo:@etchant55 Aoi Lab.

他にも、1日の大会で未就学児クラスからエリートカテゴリーまで同じ会場で開催されることも多く、家族で楽しみやすいのもメリットです。日本だとロードレースも同様に複数カテゴリーのレースが開催されることがありますが、シクロクロスの方が競技時間の短さと会場のコンパクトさもあってファミリーフレンドリーで充実していると思います。開催場所も、夏のスキー場とかで開催されることが多いMTBに比べると運動公園などの比較的アクセスしやすい場所のことが多いです。

デメリットは?

まず何よりも、新たに機材を用意しなければならないことです。ロードバイクっぽい自転車とはいえ、微妙に設計は違うので兼用することはなかなか難しいと思います。(最近のロードは太いタイヤがはまりますが・・・)シューズもオフロード用のものが必要で、ホイール自体はロードと同じものを使いますが、タイヤをはめる手間を考えると新たに専用ホイールも用意することになると思います。ある程度本格的になったらスペアバイクも必要になってくると思いますので機材サポートのない選手にとっては新たな負担となります。

大事な週末を使うので人によっては他にやりたいことがあるのにって人もいるでしょう。

そもそもオフロードを楽しみながら走れるくらいまでのレベルにない人だと、ただ辛いだけの競技かもしれません。

ロードレースの競技者にとっては、シクロクロスに参加する時間分ロードのトレーニングの時間は多少なりとも減るので、そもそもトレーニング時間が十分に取れていない選手はロードシーズンに向けた準備が遅れる可能性もあります。

転倒の際の怪我のリスクも低いとはいえ、ロードに比べると転倒の絶対数自体は増えるので、うまく受身が取れなければひどい怪我をするかもしれません。

まとめ

シクロクロスでしか養えない繊細な感覚が養える。ロード選手にとっても良いトレーニングになるし家族でも楽しめる。何より楽しい。

機材の準備は大変。なにごとも無理しすぎるのは良くない。

みんなシクロクロス楽しいよ!

📷にしむらピッピさま

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