女性アスリートのコンディショニング、トレーニングと食事

僕自身は男ですが、女子選手を指導することもあるので、男子とは違った女性特有の情報も最低限知っておかないとと思って勉強しています。

僕は実体験から学ぶということができないジャンルで、勉強したり周りにいる人たちに聞いたりするしか学ぶ手段がないのでまだまだ浅い知識しかありませんが、学んできたことを少しシェアしたいと思ってこの記事を書いています。現代でもまだまだとても繊細な問題かとは思いますが、女性アスリートに関わる男性の皆さんにも読んでもらえたら嬉しいですし、もし間違っていることを書いていたら教えていただけると嬉しいです。特に当事者の女性の方々からは、「そんなの常識」とか「わかってないなぁ」「それは意外と知らなかった」とかあるかもしれませんが、これが周りの人たちと話すきっかけになったら良いなと思いながら書いています。

まず、月経周期(Menstrual Cycle)について。

人によって日数は違いますが、ある一定のリズムで生理周期があって、その周期に合わせてホルモンバランスが変化します。そのホルモンバランスの変化で調子(ここでは競技のパフォーマンス)も多少は変化するとは思いますが、どの時期にどんなトレーニングをするとそのトレーニング効果が変わるかといった研究で目立った成果は出ておらず、たとえば周期の1日目から15日目まではこのトレーニングをすると良いといったことはないそうです。なので、今はこの時期だからこのトレーニングをすべし!ということは考えなくてもいいそう。ほんのわずかな違いはあるかもしれないので、今後もしかしたら新しいトレーニング理論ができてくるかもしれませんね。

その周期を測る方法の一つにホルモン量の変化を調べる方法がありますが、それは個人差が大きく、たとえばあるAさんという人のあるホルモンの分泌量が一番多い時期に数百という量だったとして、他のBさんという人は一番多い時期には数千という単位になっていてAさんの量はどちらかというと分泌量の少ないタイミングの数値となっていたりします。なので、このホルモンの絶対的な数値が高いから良い、低いから悪いということは無く、個々の変化を一定期間観測し続けて、その変化を計測し続けないといけません。

そして、妊娠をコントロールするためのピルの服用やホルモンを分泌させるIUDなどはパフォーマンスにマイナスの影響を与える場合があるので使用するには注意が必要ですが、そのマイナスの影響よりも一定リズムで周期をコントロールできるということ自体のプラスの影響(たとえば大事な試合の時期に辛い生理の期間が当たらないようにするできる)もあるので服用には注意を払いつつも有効に活用すべしということ。

トレーニング内容に関しては、男性に比べると女性の方が筋量が少なく体も小さめで、さらに遅筋の比率が高いそうで(この男女差は人種によって違うのかな、、、そこはまだ勉強不足です)、それらの影響で疲労からの回復は早い。ただ、栄養不足に対して敏感に反応するのでトレーニング量と食事のバランスには注意が必要です。そして、練習ボリュームに関しても注意が必要で、特にロードは男女が混ざってある程度の練習はできると思います。ですが、たとえば、同じ150kmを走ったとしても、当然ながら男子よりも女子の方が時間が平均スピードが遅い場合が多く、走行時間が長くなって結果的により疲労が蓄積しがちなので、距離ではなく時間で管理したいとことです。これはパワーメーターが一般化してきている今なら、多くの人が定量化できてきているジャンルかとは思います。

そして、個人がコントロールできるということで最も大事なのが食事に関して。

摂食障害を防ぎ、アスリートの中にもとても多い骨粗鬆症や無月経、貧血なども防がなくてはいけません。月経周期のタイミングによっては、食欲旺盛な時期とあまり食べなくても平気な時期等色々あるとは思いますが、食べたい時期はその人の体にとってそれが必要だから欲しているという側面もあります。短い期間での体重変化はそこまでシビアにならず周期全体を通して体重管理をした方が精神的にも楽だと思います。

減量に関しても注意が必要で、特に成長期にあるアスリートは体を作らないといけません。これは男子にも言えることですが、しっかり食べて体を作ることが最も重要だと思います。

例えですが、家に住んでいるところを想像してみましょう。毎月家賃や光熱費全て含めて家を維持管理にも含めて20万円予算があるとします。(この金額が高いか安いかはさておいて・・・)。ここでもし、毎月10万円に減らしたとしたらどうなるでしょう?1ヶ月ならとりあえず空調を止めたりして節約して大丈夫でしょう。少しは貯金もあるかもしれませんからとりあえずの家賃等は数ヶ月ならなんとかなるかもしれません、しかし、たとえば何か家電が壊れたり、壁に穴が空いたりそれを修理する費用は足りなくなります。光熱費もずっと削っていては住んでいる人の体調も崩しますし、ましてやいい家電を買ったり増築したり家をアップデートするのは厳しいでしょう。

家が自分の体、20万円が食事(=収入)だと思ってください。ある一定量以上の食事がないと、身体の最低限の機能を維持するのが精一杯で、足りない期間が長ければ免疫機能が壊れたり怪我をしやすくなるかもしれません、ましてや体を大きくしてパフォーマンスを上げるなんてもってのほか。無理な食事制限は長続きしません。

流行りの糖質を抜いて脂肪燃焼比率を高めるという食事方法についても(ケトンやらなんやらってやつですね)、僕が調べた限りでは20日間以上のステージレースを走るようなトップ選手以外は効果がかなり限定的で、もし行うとしても血糖値や各種ホルモン値等のパラメーターを常時監視しつつ注意深く行わないといけないので、トップ選手が組織的に行う以外はリスクが非常に高く、逆にしっかり食事をとっているほうがパフォーマンスは発揮されるという明確なデータも多いです。なのでおすすめしないという感じです。

30代後半40代でもトップレベルの走りをしている選手も多くいます。なので、特に若いうちはあまり減量のことや食事制限のことは気にせず、しっかり食べてその分しっかり練習して立派な家を建てるように立派な身体を作っていってほしいなと思っています。そして何より、人の体はそれぞれ大きく違う反応をするので、それぞれがいい指導者と情報を共有しつつその人のベストな方法を見つけていっていただけたら嬉しいです。

参照⇩

https://www.fasttalklabs.com/fast-talk-femmes/sports-nutrition-for-female-endurance-athletes-with-jennifer-sygo/

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自転車選手小森亮平のブログです